2008 Fiscal Year Annual Research Report
超低振動数ラマン分光装置の開発とイオン液体の液体構造解明への応用
Project/Area Number |
07J06844
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡島 元 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | イオン液体 / 液体構造 / 低振動数ラマン分光 |
Research Abstract |
前年度に開発したヨウ素フィルターによるマルチチャンネル型の装置を用いて、低振動数ラマンスペクトルの秒単位実時間測定を行い、イオン液体や分子液体の融解における構造変化を観測した。 融点が常温より高くアニオンの構造が単純なbmim Clを試料として用い、結晶の急速な加熱によって低振動数ラマンスペクトルが変化してゆく様子を観察したところ、格子振動に対応すると考えられるシャープなバンドが加熱に伴い消失することが見いだされた。これは試料の温度がプラトーとなる時刻とも一致しており、融解によって結晶構造が崩れてゆく過程を低振動数ラマンスペクトルの変化として観測することに成功したと言える。 さらに各バンドの消失速度に差があることから、格子振動の消失に時間差があること、すなわち段階的な融解過程を推察することができる。今後時間分解能をより高めて、より精密に観察することによって、融解後に見られる幅広のバンドと結晶中のシャープなバンドとを対応させることができ、さらには結晶構造がどのように失われて液体になるのかについての手がかりが得られると考えている。比較のため同様の実験を分子結晶(アントラセン、ジフェニルナフタレン)についても行っており、既に帰属のついている格子振動バンドの融解に伴う変化についての考察を進めている。 また装置性能も向上させた。特にヨウ素フィルターの温度を最適化することで、シスチンの9.8cm^<-1>までの低振動数バンドを露光時間0.2秒で観測することが可能となり、低振動数ラマン分光の応用の幅が広がった。
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