2009 Fiscal Year Annual Research Report
台湾先住民・ブヌン族による地図作成運動と土地観念の歴史的変容に関する人類学的研究
Project/Area Number |
07J06863
|
Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
石垣 直 Yokohama National University, 教育人間科学部, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 先住民 / 地図 / 土地観念 / 権利回復運動 / 殖民地主義 / 脱植民地化 / 台湾 / ブヌン族 |
Research Abstract |
本年度は、これまでの研究成果を踏まえ、日本文化人類学会第43回研究大会(於:大阪国際交流センター)において、台湾のオーストロネシア語族系先住民による土地回復運動のイデオロギーと現地住民の意識との齟齬に関する研究発表(「先住民族運動言説と現地社会--台湾・オーストロネシア語族系住民による地図作成運動の事例から」)を行った(5月30日)。また、翌週には日本台湾学会第11回学術大会に参加し、第五回日本台湾学会賞(歴史社会分野)を受賞した(6月6日。2007年発表の論文「現代台湾の多文化主義と先住権の行方」『日本台湾学会報』9号に対して)。 さらに7月下旬から9月中旬には台湾を訪問し、台北市、台北県、南投県、台東県などで原住民(ブヌン)の土地・保留地問題ならびに2008年に誕生した馬英九政権(中国国民党)後の原住民の政治意識・アイデンティティなどに関する調査を行った。同調査からは、グローバルな先住民運動イデオロギーを用いた原住民エリート層による権利回復運動の流れと日常を生きる一般の原住民との間には(「原住民」、「主権」、「土地返還」といった用語が流布される一方で)依然として温度差があること、2期八年間の民主進歩党政権後も原住民の中国国民党支持が高いこと、その背景にある国民党地方議員や原住民のローカル・エリートらとの癒着関係、直接的な利害関係の対象者としての〓南系住民に対するマイナス・イメージなどが明らかになった。 なお、こうした調査と前後して、8月にはブヌンの土地・保留地利用制度の歴史的変容に関する論文を、また翌年3月には2008年以後の台湾の親中路線と原住民(ブヌン)の国家意識・アイデンティティに関する論考を発表した。
|
Research Products
(3 results)