2008 Fiscal Year Annual Research Report
二十世紀思想史と革命的マルクス主義の形成および展開
Project/Area Number |
07J06878
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
白井 聡 Waseda University, 政治経済学術院, 特別研究員(PD)
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Keywords | ボリシェヴィズム / マッハ主義 / レーニン / ボグダーノフ / 唯物論 / 哲学史 / マルクス主義 / テクノロジー |
Research Abstract |
平成20年度における最も大きな成果は、これまで研究者が継続して研究してきた、レーニンの唯物論の歴史的位相についての研究をまとめた論考を発表したことである。同論考は、「〈物質〉の叛乱のために--レーニンの唯物論と反映論」と題され、御茶の水書房より「叢る書アレテイア」の一環として発表された。同論考は、20世紀初頭のボリシェヴィキ党内において、レーニンとボグダーノブ等のマッハ主義者とのあいだで交わされた哲学論争を題材としたものである。近年、同論争については、現代思想の主要潮流にも連なるマッハ主義の思考に対し、レーニンの「弁証法的唯物論」は一種の哲学的反動主義にすぎなかったという解釈が一般的に流通してきた。同論考は、同論争が置かれた歴史的文脈を詳細に検討してみることにより、論争当事者において主題化された問題の真の位相を明らかにし、それにより一見したところアナクロニズムのようにも見えるレーニンの主張を再検討し、その意義を明らかにすることを狙った。その主たる主張は、レーニンが「唯物論対観念論」という枠組みによって論じた問題は、当時の思想的文脈に置き直してみるならば、経験の質をめぐる問題であったということである。レーニンは、経験に真正性が与えられるためには〈物質〉の如き形而上学的な概念が必要であることを説き、またレーニンの経験主義的認識論は、〈物質〉の直覚とも言うべき独特の論理を有することになったが、これは人間とモダンなテクノロジーとの融合を示唆するものであった。同論考は、これらの事柄を明らかにした。
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