2008 Fiscal Year Annual Research Report
半導体アンチドット系におけるアハラノフ・ボーム型振動
Project/Area Number |
07J06909
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 雅紀 The University of Tokyo, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 低温物性実験 / 半導体二次元電子系 / 量子ホール効果 / アンチドット |
Research Abstract |
平成20年度の研究実施状況としては、半導体二次元電子系に微細加工を施すことで実現されるメゾスコピック系において、電子が低温・磁場中で示す量子現象についての研究を行った。特に、電子線リングラフィとウェットエッチングによる微細加工技術を用いて基板上に作製したアンチドット系に観測されるAB型振動という磁気抵抗振動を調べることで、アンチドット周りに局在した電子間の相互作用によるスクリーニング効果及びスピン(ゼーマン)効果について知見を得ることを目的として実験を行った。 初めに、アンチドットを周期的に配置した正方格子試料において観測されたAB型振動を用いて、アンチドット周りのポテンシャル勾配を求め、量子ホール領域でのスクリーニング効果について議論した。まず、アンチドット周りのポテンシャルがスクリーニング効果によって生の値よりなだらかになっていることを明らかにし、さらに温度依存性を調べることで、量子ホール領域におけるスクリーニング効果が温度と共に弱まる様子を直接的に示すことに成功した。 次に、ν=2量子ホール状態近傍においてAB振動のゼーマンエネルギー依存性を調べ、アンチドット周りに作られる電子状態について議論した。金電極の間にアンチドット一つを配置した試料を磁場中で傾けることで、ν=2量子ホール状態の低磁場側と高磁場側それぞれについてAB振動のゼーマンエネルギー依存性を調べ、低磁場側が強い全磁場依存性を示すのに対し、高磁場側は大きな違いを示さないことを明らかにした。そして、ν=2の低磁場側におけるAB振動はスピン分離したエッジ状態が作る一電子描像で説明できるのに対し、ν=2のランダウ準位が非局在化を始める高磁場側では一電子描像が成り立たないことを示唆した。
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Research Products
(3 results)