2007 Fiscal Year Annual Research Report
ハイパーラマン散乱における分子近接場効果を用いた生細胞中の分子間相互作用の観測
Project/Area Number |
07J06931
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
島田 林太郎 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ハイパーラマン分光 / 分子近接場 / 非線形ラマン分光 / 溶質溶媒間相互作用 / β-カロテン |
Research Abstract |
励起波長を広範囲で選択可能かつ高感度にハイパーラマンスペクトルを取得できるハイパーラマン分光装置を新たに制作した。励起光源の変更や検出光学系の見直しにより、これまでに取得してきたハイパーラマンスペクトルと比べ大幅に信号雑音比の向上したスペクトルを測定することが可能になった。装置性能の向上により、以前と比べ、約1/10の時間でハイパーラマンスペクトルの測定が可能になった。さらにこれまで検出感度不足により観測できなかった系についてもハイパーラマンスペクトルの測定が可能になった。その結果以下に挙げる2点について新たな知見を得ることができた。1,β-カロテン存在下で「分子近接場効果」により増強効果を受け、観測された溶媒由来のバンドとβ-カロテンの存在しない条件下で観測される溶媒由来のバンド位置に差異があることを初めて明らかにした。ハイパーラマン散乱のバンド位置は分子のおかれた環境を鋭敏に反映するため、本結果は「分子近接場効果」によって観測している分子が、大多数の溶媒分子と異なる環境、っまり溶質近傍に存在していることの直接の証拠であると考えられる。また、「分子近接場効果」によってそのような特殊な環境の分子のみを選択的に観測していることを初めて直接的に示すことができた。2、溶液中で発生したハイパーラマン信号が試料セル表面に到達するまでに溶質に再吸収されることにより、スペクトルが歪められることが明らかになった。また、このスペクトルの歪みはハイパーラマン散乱を発生させる位置と試料セル表面との間隔を制御してスペクトルを測定することにより、補正することが可能なことを示すことができた。
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Research Products
(4 results)