2007 Fiscal Year Annual Research Report
生体信号のカオス解析によるヒューマンエラー発生の予測と制御
Project/Area Number |
07J06944
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
今西 明 Kwansei Gakuin University, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ヒューマンエラー / カオス解析 / 生体信号 / リアプノフ指数 / 指尖容積脈波 / 疲労 / トラックドライバー |
Research Abstract |
死亡事故等の原因となるヒューマンエラーを生起し得る心身状態を生体信号のカオス性から予測するため、最初に脈波におけるカオス的指標の妥当性を検討した。カオス的指標の代表であるリアプノフ指数は様々な研究により、将来、工学的利用可能性が期待されているが、リアプノフ指数は元来、解析対象がカオス性を持つ信号であるか否かを判断する指標として確立されたものであるため、それを定量的に使用するためには、その妥当性を検証する必要がある。そこでシミュレーションにより、脈波の如何なる変化がそのリアプノブ指数に影響を与えるのかを検討した。その結果、脈波のリアプノフ指数を算出する際に用いる適切な設定値や波形の加工方法が示された。また、脈波のリアプノフ指数は脈拍情報の中でも特に脈拍間隔の標準偏差と非常に関わりが強いことも示された。 上記のような基礎研究と並行して、実験室実験およびフィールド実験により、脈波のリアプノフ指数がヒューマンエラーを生起し得る心身状態を把握する指標として利用可能であるかも検証した。実験室実験では、精神作業(暗算課題・鏡映描写課題)を行った際の脈波のリアプノフ指数を検討した結果、作業遂行中は安静時と比較して有意に低下することが示された。また、フィールド研究では、夜間に合計9時間に渡るトラック運転中のドライバーの心身状態を脈波のリアプノブ指数から評価した。その結果、ドライバーの疲労感や眠気が高まる際、脈波のリアプノブ指数は低下することが示された。 以上3点の研究より、脈波のリアプノフ指数がヒューマンエラーを生起し得る心身状態を把握する指標として有効であることが証明され、さらにリアプノフ指数の低下、すなわち、カオス性の低下は作業者の疲労や眠気といった作業を妨害する要因と非常に関連が強いことが明らかになった。
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Research Products
(4 results)