Research Abstract |
採用最終年度となる平成21年度は,リズミカルなヒトの両手協調運動,およびその構成要素となる片手運動の制御機構を解明するため,京都大学大学院と東京大学大学院の共同研究体制を取りながら,以下の研究を実施した.第一に,スティックの使用が片手最速タッピング運動に与える影響について調査し,スティックの使用に伴ってタップカとタップ間隔の安定性が向上することを明らかにした(Fujii & Oda, 2009a).第二に,スティックの使用が両手最速タッピング運動に与える影響について調査し,スティックの使用により両手協調性の安定度が向上することを明らかにした(Fuji & Oda, 2009b).第三に,ノンドラマーとドラマーの片手最速リズム運動中の前腕筋表面筋電図活動を比較し,ドラマーはノンドラマーに比べて屈筋群の活動タイミングが安定しており,主動筋-拮抗筋群間の共収縮水準が低いことを明らかにした(Fujii et al.2009a)。第四に,世界最速ドラマーの片手最速リズム運動パフォーマンスと前腕筋表面筋電図活動を調査し,世界最速ドラマーはつよい右利きであるにも関わらず左右手ともに片手での10Hz動作を遂行可能であり,39ミリ秒の時間間隔で主動筋と拮抗筋を相互収縮させていることを明らかにした(Fujii et al., 2009b).第五に,バスケットボールの熟練選手は未熟練選手に比べて,ドリブル中のバウンス位置の誤差と変動性が小さく,手がボールに接触している時間が長いことを明らかにした(Katsuhara et al., in press).これらの研究成果は,道具の使用がヒトの運動機能に与える影響や,熟練音楽家・熟練スポーツ選手の運動スキル獲得機序について新たな知見を提供し,ヒトの身体運動制御・運動学習研究の発展に着実な貢献を施した点で意義深いといえる.
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