2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J07030
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井上 雅世 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 適応反応 / 記憶 / シグナル伝達系 / 時間スケール / 走化性 / 理論生物学 |
Research Abstract |
外部環境から刺激を受けた時にバクテリア等のミクロ生物が示す応答について、理論的立場から研究を行った。これらの生物は人間の脳に対応する様な複雑な情報処理機構を持っているとは考えられず、シグナル伝達系で表される様な化学反応の連鎖により情報を伝達し処理していると考えられる。しかし、刺激の種類蕉応じた多様な応答や、以前におかれていた環境条件を記憶しているかの様な振舞を示すことが分かり、複雑な機構がなくとも複雑な情報処理を行い得る可能性がある。 そこで、外部入力に対し適応応答を示すモデルを出発点としこれらを結合させた系を考える事とした。なお、この様な適応素子を結合させた系の研究はこれまで見られなかったものである。具体的には、まず、AsakuraHondaモデルと呼ばれるモデルを基にこれを発展させ、環境変化に対し適応を示すモデル(1段階適応モデル)を設計しその性質を調べた。このモデルはパラメータを変化させる事で、完全適応、不完全適応、遅い緩和、オーバーシュート等の多様な振舞を示す事ができるものになっており、用いる化学反応機構のわずかな差異が多様な応答を生み出す可能性を示している。 さらにこの1段階適応モデル2個を結合させることで、短時間スケールでの不完全適応と長時間スケールでの完全適応という記憶構造を示すモデルを構築した。今後はこのモデルを出発点として、1段階適応モデルを結合させる際に各モデルの反応時間スケールに要求される条件等について調べていく。
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