2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J07030
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井上 雅世 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 適応反応 / 記憶 / シグナル伝達系 / 時間スケール / 理論生物学 |
Research Abstract |
外部環境から刺激を受けた時にバクテリア等のミクロ生物が示す応答について、理論的立場から研究を行った。これらの生物は人間の脳に対応する複雑な情報処理機構を持っているとは考えられず、シグナル伝達系の様な化学反応の連鎖により情報を伝達し処理していると考えられる。しかし、刺激に応じた多様な応答や、以前の環境条件を記憶しているかのような振舞を示すことが分かっており、複雑な機構がなくとも複雑な情報処理をおこなっていると考えられる。 ここでは環境変化に対して適応できるという性質に注目し、適応を示すモデル素子同士が相互作用によって結合した場合に示す振舞について調べた。適応反応としてLevchenkoらのモデル(A.Levchenko and PA.Iglesias,Biophysical Journal,2002)に修正を加えて用いた。このモデル素子を複数個用意し、外部からの入力が伝搬されるように相互作用を加え、適応反応が多段階に絡み合うモデルを設計した。相互作用には、生体内の反応で頻繁に表れるシグモイド型の関数を用いた。 特に3個の素子を組み合わせた場合について、ネットワーク構造と振舞の関係について調べた。そこでは、元の適応反応に定義される時間スケールよりも1桁以上長い時間スケールでの振動(時間スケールの延長)も得られた。これは目的の1つである「適応反応が積み重なることで時間スケールの干渉が起こり、長時間スケールの応答が生じる機構を理論的に研究する」ことに対する1つの答えである。さらに、相互作用ネットワーク構造のうちモデルの振舞を規定する特徴的な構造を抽出し、時間スケールの延長などの非自明な振舞がネットワーク構造内のフラストレーションに基づいているということを明らかにした。
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