2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J07030
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井上 雅世 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 適応反応 / シグナル伝達系 / 理論生物学 / 時間スケール |
Research Abstract |
まず、適応を示すモデル反応素子の結合系が外部刺激に対して示す振舞について調べた。 このモデルは相互作用ネットワーク構造に応じて、全素子が完全に適応した状態、元の適応反応と同じ時間スケールでの振動、非周期運動、さらに元の適応反応とは異なる時間スケールをもつ振舞として、興奮だけを繰り返す速い振動、緩和の時間スケールよりも1桁以上大きい時間スケールでの遅い周期運動を示した。これは研究目的の1つである「適応反応が積み重なることで時間スケールの干渉が起き、長時間スケールの応答が生じる機構の研究」に合致するものである。ここでの結果は、生体内反応でみられる、多様な時間スケールをもつ応答を生み出すメカニズムの1つを与えるものである。 また、これらの振舞は相互作用ネットワーク構造内のフラストレーション構造により分類できる事を示した。特に、大きく異なる時間スケールをもつ2つの運動は同一ネットワーク上に共存していること。それらは興奮と緩和の時間スケール比が無限大となる極限において、断熱近似をみたす場合(遅い周期運動)と破れる場合(速い振動)に対応していることを示した。 さらに、大自由度力学系の中で適応応答が実現される仕組みについて理解するため、大自由度の遺伝子発現制御モデルにおいてターゲット遺伝子の適応応答が進化を通して獲得される過程について考察した。各遺伝子は他遺伝子からの相互作用入力に応じて発現し、一部の遺伝子に加えられた外部入力が相互作用を介して伝搬しターゲット遺伝子の応答を制御する。ここでは1個のターゲット遺伝子の応答のみに条件(適応応答)を課して進化させたにも関わらず、他の遺伝子も同様に適応応答を獲得していく様子が観察された(協同的適応応答)。この様な協同的な適応応答は酵母のストレス応答においても観察されており、多種のストレスに対する応答性を高める役割があると考えられている。
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