2010 Fiscal Year Annual Research Report
中央アジア定住地帯の秩序の再編成プロセスにおけるイスラーム聖者と聖性の役割
Project/Area Number |
07J07056
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
菊田 悠 北海道大学, スラブ研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | ウズベキスタン / 聖者 / イスラーム / スーフィズム / 手工業 / 死者霊 / 職人 / ポスト社会主義 |
Research Abstract |
本年度は、9月にウズベキスタンにおけるフィールドワークを3週間行なったほか、これまでの研究成果を論文にまとめることに力を注いだ。 まず、Acta Slavica Iaponica誌に論文「Ruh or spirits of the deceased as mediators in Islamic belief : the case of a town in Uzbekistan」を投稿し、数回の手直しを経て採用決定となった。これは交付申請書の4つの調査項目のうち、(2)聖者・聖性という装置によって社会的安定性が保たれる仕組み に焦点を当てて分析したものである。その結果、当地のイスラーム信仰実践においては、ルーフあるいはアルヴォフとよばれる死者霊が重要な役割を果たしていることが明らかにされた。このような死者霊をまじえたイスラーム信仰実践の重要性は従来中央アジアの遊牧民の間で注目されてきたが、当研究は定住民の間でも、同様あるいはよりイスラームとの関連を強めた現地の解釈を伴いつつ、死者霊を介した信仰実践が行われていることを証明した。 10月末から11月に掛けては、アメリカ・ミシガン州立大学における第11回中央ユーラシア研究年次大会に参加し、"Veneration of Patron Saints by Muslim Artisans in Modern Uzbekistan" と題して発表を行った。これはウズベキスタン、フェルガナ州の町における陶業史と陶工のイスラーム的守護聖者崇敬の、ソ連時代を挟んだ変遷を分析したものである。当該地域におけるイスラーム的聖者への関心の高さもあり、聴衆は多く質疑応答も盛んであった。ここでの発表を生かして、本年度末には「Venerating the pir : Patron saints of Muslim artisans in Uzbekistan」と題する論文をCentral Asian Survey誌に投稿した。
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Research Products
(2 results)