2007 Fiscal Year Annual Research Report
バリオン振動を用いたダークエネルギー探査と銀河バイアスの非線形効果
Project/Area Number |
07J07066
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西道 啓博 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 宇宙の大規模構造 / 暗黒工ネルギー / N体シミュレーション / バリオン音響振動 |
Research Abstract |
銀河の空間分布に現れるバリオン音響振動(BAO)の痕跡を標準物差として用いると暗黒エネルギーのモデルに制限をつけることができる。このためには銀河分布の統計量を正確に予言することが必要だ。本研究課題では、摂動論、N体シミュレーションを用いてこの課題に取り組んでいる。統計量の正確な予言を困難にする要因として、構造の非線形重力進化及び赤方偏移歪みが考えられる。本研究では、はじめにこれらの要素がBAOの与える特徴的距離に対してどの程度影響するか摂動論を用いて定量的に評価した。その結果、最も単純な線形理論に基づいた取り扱いでは5パーセント程度の誤差が生じうるが、近年のスローンデジタルスカイサーベイのデータ解析に用いられた新しい取り扱いにより、これらによる誤差をサブパーセントレベルに抑えられることを示した。次に、より正確に統計量を予言できると考えられているN体シミュレーションそのものの誤差評価を行った。線形近似の成り立つ大きな距離において、線形理論の予言から数パーセントのずれが生じることを発見し、これはシミュレーションのボックスサイズの有限性から来るものであることを突き止めた。そして、このずれを説明する解析的モデルを提案した。この方法によりボックスサイズの有限性による効果を取り除いた後、N体シミュレーションと最近提唱されているいくつかの解析モデルとの予言の比較を行った。この結果、BAOの特徴的距離程度において、各モデルとシミュレーションの結果の不一致の具合は1パーセント程度と、大変精度よく予言できることを示した。
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