2008 Fiscal Year Annual Research Report
バリオン振動を用いたダークエネルギー探査と銀河バイアスの非線形効果
Project/Area Number |
07J07066
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西道 啓博 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 暗黒エネルギー / 宇宙の大規模構造 / バリオン音響振動 |
Research Abstract |
銀河の空間分布に現れるバリオン音響振動(BAO)の痕跡を標準物差として用いると暗黒エネルギーのモデルに制限をつけることができる。次世代広視野銀河赤方偏移探査からBAOのスケールを測定し、暗黒エネルギーを特徴づける状態方程式パラメタを数%の精度で決定することが観測的宇宙論にとって当面の大きな目標である。これを達成するためには、銀河分布のパワースペクトルをサブパーセントレベルという今までにない高精度で理論予言することが不可欠になってきた。本研究課題では、摂動論、N体シミュレーションを用いてこの問題に取り組んでいる。正確な理論予言を困難にする要因として、3つの非線形過程:構造の重力進化、赤方偏移歪み、及び、銀河バイアスが考えられる。昨年度の非線形重力進化の研究をさらに発展させ、N体シミュレーションのサイズの有限性に起因する誤差を理論的に取り除く手法を開発した。その結果、BAOの測定にとって重要なスケール全体でサブパーセントレベルの精度を達成した。さらに、今年度は銀河の特異速度場に起因する赤方偏移歪みの影響を取り入れた解析に着手した。既存のモデルの精度と限界を明らかにした。この結果、非線形重力進化、赤方偏移歪みの2点のみを考慮した場合において、本研究で達成した精度は、次世代広視野銀河サーベイの観測データと比較したときに、その期待される統計誤差に比べて系統誤差を十分小さく抑えることができるレベルに達していることが分かった。
|