Research Abstract |
これまでの報告から,サーモライシン(TLN)の活性を向上させる変異はLeu144→Ser(A1),Asp150→Glu(A2),Ile168→Ala(A3)であり,熱安定性を向上させる変異はSer53→Asp(S1),Leu155→Ala(S2),Gly8→Cys/Asn60→Cys/Ser65→Pro(S3)である.これらの変異の組合わせによる活性と熱安定性への効果を調べた。その結果,活性を向上させる変異であるA1とA2を組合わせたとき活性が最も向上した[N-carbobenzoxy-L-aspartyl-L-phenylalanine methyl ester(ZDFM)加水分解のkcat/kmは野生型酵素の10.5倍].一方,A1とA3を組合わせると活性が消失した。熱安定性を向上させる変異であるS1とS2を組合わせたとき熱安定性が最も向上した[80℃で熱失活の一次反応速度定数(kobs)は野生型酵素の10%].一方,S1とS3を組合わせると熱安定性が向上しなかった。さらに,A1,A2,S1を組合わせると活性と熱安定性がともに向上した(ZDFM加水分解のkcat/kmは野生型酵素の10.2倍,kobsは野生型酵素の60%).すなわち,変異の組合わせにより,活性と熱安定性がともに向上した変異型TLN(L144S/D150E/S53D)が取得された。一方,A1,A2,S1,S2,あるいはA1,A2,S2を組合わせると活性が消失した。A1とS2の組合わせは活性を消失させることが示唆された。 また,TLNは加水分解の逆反応を利用して人工甘味剤アスパルテームの前駆体であるZDFMの合成に応用されてきた.活性が向上した変異型酵素によるZDFM合成反応を解析した.その結果,これらの変異型TLNは野生型酵素よりもZDFM合成反応を効率的に進めることができると考えられた。
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