2007 Fiscal Year Annual Research Report
光環境変動により引き起こされる光化学系I複合体の動態の解析
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07J07175
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
高橋 拓子 Okayama University, 大学院・自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 光化学系I複合体 / ステート遷移 / リン酸化 |
Research Abstract |
ステート遷移は、光化学系I(PSI)とII(PSII)の間で励起エネルギーを再分配し、光合成を効率的に行う馴化機構として知られている。PSIIがより励起されたて生じるステート2では、PSIIの集光性複合体(LHCII)の一部がPSIに移動・結合することをこれまでの研究により示してきた。 19年度は、ステート2において形成されるPSI-LHCI/II超分子複合体に存在するLHCIIの量を見積もることを目的として研究を行った。まず、より完全にステート2への誘導する条件の再検討を行った。その結果、野生型の細胞をグルコース/グルコースオキシダーゼを添加した完全な嫌気条件の暗所下に放置することでより完全なステート2に誘導できることが分かった。 ステート1から2への遷移には、LHCIIのリン酸化が伴うことが知られている。そこでステート1及び2の細胞における光化学系タンパクのリン酸化を、リン酸化スレオニン抗体を用いて検出したところ、ステート2ではステート1に比べLHCIIのリン酸化レベルは4-10倍増加されていることが明らかになった。同様の実験を単離したチラコイド膜を用いて行うと、リン酸化のレベルが大きく減少していることが分かった。細胞の破砕やチラコイド膜の精製過程で、リン酸化タンパクが脱リン酸化されたと考えられるが、脱リン酸化酵素阻害剤の効果は限定的であった。本結果によりリン酸化タンパクの解析は注意深く行う必要があることが示された。 今回の方法でステート2に誘導した細胞から単離したチラコイド膜を可溶化後ショ糖密度勾配超遠心で分画すると、より多量のPSI-LHCI/II画分が得られ、特にCP26の分離量が増加していた。この標品を用いて、以下の方法で、PSI-LHCI/II超分子複合体におけるLHCIIの量比を求めた。PSI-LHCI/II超分子複合体は塩に対して不安定であるため、NaCl存在下でPSI-LHCI/II超分子複合体をPSI-LHCIとLHCIIに解離させ、それぞれをゲルろ過クロマトグラフィーで分離した。得られたそれぞれの画分のクロロフィル量を分光学的に求め、PSI-LHCI/IIにおけるLHCIIの量比を見積もった。その結果、PSI-LHCI/II超分子複合体の全クロロフィル量の25%がLHCIIに相当することが明らかになった。これは、これまでの報告に比べかなり多くのLHCIIが結合していることを示す結果である。
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Research Products
(5 results)