Research Abstract |
本研究では,Wilsonの二重制約付きエントロピー最大化による空間相互作用モデルを一般化し,連鎖的な移動を行うトリップチェインのための新たなるモデルを構築した. 空間相互作用に関する既存研究では,地域内で観測される人や物,あるいは情報の流動に対して数学モデルを適用し,その再現あるいは推定や予測を行うための手法が数多く提案されてきた.これら先行研究の多くは,発生から集中という2点問で定義される流動を分析の対象としている.しかしながら,人々の移動行動に着目すると,何ケ所かの地点を連続的に訪れることが頻繁に行われている.この場合,地点同士を結ぶ個々のトリップは,互いに強く影響を及ぼしあいながら生じることが予想される.このような背景から,本研究では連鎖的移動を行うトリップチェインを前提とし,種々の制約条件の下で,その分布交通量を推定する新たなる手法を提案した. Wilsonのエントロピー・モデルは,空間相互作用に関する研究蓄積の中でも,重力モデルの誘導,再現性の高さで特に注目すべきものである.そこで本研究では,交通行動において最も頻繁に観察される周回トリップチェインを扱うべく,エントロピー・モデルの拡張を行った.本モデルの枠組みによって,目的ゾーン同士での行き来を考慮した集中量の制約を課した上で,周回行動を明示的に取り扱うことが可能となった.本研究のモデルは,(i)連鎖的移動を明示的に取り扱った分布交通量の推定や,(ii)空間相互作用を考慮した都市活動分布の形成過程の記述といった,都市計画におけるいくつかの実際的な事柄へと応用することができるものと考える.
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