2008 Fiscal Year Annual Research Report
情報伝達物質輸送系の同定を目指したABCA輸送体の機能解析
Project/Area Number |
07J07249
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大東 穂 Osaka University, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ABCA5 / ABC輸送体 / 免疫染色 / ノックアウトマウス |
Research Abstract |
近年ABC輸送体の中でも特にABCAサブファミリーが、脂質の膜を超えた移動や局在に大きな役割を果たしていることが明らかになりつつある。この輸送体ファミリーの中でも機能が明らかになっていないABCA5の生理的役割の解明を目指して研究を進めた。脳においては、ABCA5はNissl染色で染色される神経細胞に発現していた。また、ABCA5はアストロサイトやミエリンには発現しておらず、一部のオリゴデンドロサイトの細胞体で発現していた。さらに神経作動性を区別する種々のマーカー抗体を用いて検討した結果、ABCA5の発現する神経はPhenylethanolamine-N-methyltransferase(PNMT)陽性のアドレナリン作動性神経であることを明らかにした。脳においてABCA5はアドレナリン作動性神経に発現していたが、副腎髄質においてもカテコールアミンの産生・放出に関わるクロム親和性細胞に発現していることが確認できた。そこでABCA5ノックアウトマウス血中でのカテコールアミン量を定量したところ、野生型マウスに比べてアドレナリン、ノルアドレナリン共に濃度が上昇していた。カテコールアミンは細胞内小胞に蓄えられてエキソサイトーシスによって放出されるため、ABCA5が放出にどのように関与しているか調べるためABCA5の細胞内局在を調べた。その結果ラット副腎由来のPC12細胞において、ABCA5はGM130で染色されるシスゴルジ体のごく近傍の細胞内膜系に局在し、これはRab11で染色されるTGN,リサイクルエンドソームと一致した。最近、細胞内膜系の膜の脂質組成の変化と、小胞輸送を関連付ける研究が次々と報告されている。これらを踏まえて、ABCA5は内膜系で何らかの脂質を輸送し、小胞輸送の過程に関与しているのではないかと考えている。本研究は機能が全く未知である輸送体ABCA5の局在を詳細に解析し、ノックアウトマウスの解析と合わせて、機能に関する重要な示唆を与えた。今後のABCA輸送体研究の基礎的な知見になるものと考えている。
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Research Products
(1 results)