2008 Fiscal Year Annual Research Report
再生医療本格化のための上皮幹細胞生物学に関する研究
Project/Area Number |
07J07276
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
村上 大輔 Waseda University, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 再生医療 / 幹 / 前駆細胞 / 上皮-間葉系変換 / 細胞シート / 重層扁平上皮 |
Research Abstract |
我々はこれまでに、培養口腔粘膜上皮細胞シートを用いて、角膜や食道粘膜上皮といった異所的な上皮組織の再生医療に成功してきた。角膜上皮幹細胞疲弊症の患者の視力が移植後数年に渡り維持できていることから、移植した細胞シート中には上皮幹/前駆細胞が存在することが示唆されている。 実際に培養重層化口腔粘膜上皮細胞シートは、生体口腔粘膜上皮と同様に、小さな立方状の細胞からなる基底細胞層を有し、表層へ向うに従い扁平した重層扁平上皮様の構造を有する。その基底細胞層は、幹/前駆細胞マーカーp63陽性・分化マーカーK13陰性の比較的未分化な細胞からなることが知られてきた。今年度は、その上皮幹/前駆細胞が局在すると考えられる基底細胞層における細胞間接着に関連する様々なタンパク質の発現を主に免疫組織学的に検討してきた。その結果、細胞シート基底細胞ではE-,P-cadherinやdesmocolin等の発現が減弱し、対照的に間葉系細胞に発現が見られるN-cadherinは基底細胞のみで発現していた。さらに、この基底細胞層はPan-CK陽性であると同時に間葉系細胞のマーカーであるVimentin陽性であった。以上の結果から、口腔粘膜上皮細胞シートに含まれる未分化な基底細胞は、上皮-間葉系変換(Epithelial-mesemcymal transition:EMT)を起こしていることが示唆された。本研究成果は、がん細胞の浸潤でよく知られているEMTという現象が培養過程の正常な上皮細胞、特に幹/前駆細胞に限局して起こることを示した点で、EMTと幹/前駆細胞の直接的な関係性を示す新たな知見となった。これにより、基底膜を介してEMTまたはその逆のMETが関与する新たな上皮幹細胞システムの仮説や、上皮幹/前駆細胞からがん幹細胞へと移行するがん幹細胞仮説を考察する上で、きわめて重要な発見となったと考えられる。
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Research Products
(2 results)