2008 Fiscal Year Annual Research Report
物語読解時の表象構築過程における知覚的長期記憶の役割
Project/Area Number |
07J07277
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
常深 浩平 Kyoto University, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 文章理解 / 知覚的長期記憶 / 自伝的記憶 / 心的表象 / 物語 / マンガ |
Research Abstract |
文章の読解と同様にマンガも読解されるものの一つである。しかし,マンガの読解過程に関する認知心理学的研究は少なく,ほとんどされていない状況だと言っても過言ではない。そこで,まずこれまでの文章読解研究で提唱された理論を足掛かりとして,それらの理論がマンガの読解過程にも当てはまるのか,あるいは当てはまらないのか,当てはまらないならどこが当てはまらないのかを検討した。具体的には,眼球運動測定装置を用いてマンガのコマ,吹き出し,主要な登場人物の顔毎に読み時間を測定した。データを重回帰分析した結果,文章理解研究と共通した変数(音節数,ページ数)が吹き出しの読み時間の3割強を説明することがわかった。これをもとにより詳細な内容の分析を行っていくことで,event indexing model(Zwaan,1999)のような文章理解の理論が直接的にマンガの読解過程にも応用できるかどうかを検討できると考えられる。今後も引き続き,文章やマンガといった表現形式を問わず,共通して在るであろう物語の認知処理へと迫りたい。 また,英語論文をDiscourse Processes誌に投稿し,現在修正中である。加えて,関連の最新研究をまとめたレヴュー論文を執筆し投稿した。現在一度目の査読を終え,第二稿を作成中である。また,昨年度に行った実験について,本年度夏に米国メンフィス大学で行われたthe 18th annual meeting of society for text and discourseにおいて口頭発表を行った。秋には北海道大学で行われた日本心理学会第73回大会にて,眼球運動測定装置を用いた文章読解過程に関する研究をポスター発表した。またディスコース心理学研究部会設立に参加し,自分の研究領域に関する専門の研究部会という,研究の底上げにつながる場を新たに得た。 加えて,読書中の感情についての共同研究がCognition&Emotion誌に採択された。登場人物と読者双方の感情処理は物語の内容理解および楽しみとしての読書経験にとって重要な要素であり,重要な知見と言える。
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Research Products
(3 results)