2007 Fiscal Year Annual Research Report
新奇なスピン軌道状態を持つ遷移金属化合物の電子状態の研究
Project/Area Number |
07J07291
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田久保 耕 The University of Tokyo, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 光電子分光 / バンド構造 / 電荷軌道整列 / フラストレーション / 光誘起相転移 / 遷移金属化合物 |
Research Abstract |
本研究は電子軌道やスピンに新奇な秩序構造を持つ遷移金属化合物の電子状態を、光電子分光測定やハートリーフォック計算などの実験と計算の両面から、構造ごとに系統的に調べていくことが目的である。平成19年度は主に2次元三角格子AGa_2S_4(A=Ni,Fe)や、3次元スピネル型CuIr_2S_4、AV_2O_4(A=Li,Zn,Cd,Al)などの系についての研究を行った。NiGa_2S_4とFeGa_2S_4の電子構造を光電子分光とそれに伴うモデル計算で研究した。Ni 2pスペクトルのクラスターモデル解析の結果から、NiGa_2S_4の電荷移動エネルギーは負で、基底状態はd^9L__-の性質を持つことを発見した。ここでL__-はS 3p軌道に一つホールが入った状態を表す。一方、FeGa_2S_4の基底状態はd^6の状態が支配的で、電荷移動エネルギーは正となる。交換相互作用の大きさを、ハートリーフォック計算などを用いて見積もった。その結果、基底状態がd^9L__-であると、第3近接サイト間の長距離の超交換相互作用が強くなることがわかった。NiGa_2S_4においては、この長距離の交換相互作用がスピン無秩序状態を促進する原因となっていると予想される。スピネル型構造のCuIr_2S_4は、230Kで一次の金属絶縁体転移を示す物質である。この物質の金属絶縁転移による電子構造の変化を光電子分光によって調べた。その結果、価電子帯のスペクトルは金属相ではフェルミエネルギー上に強い強度を持つのに対して、絶縁相では0.1eV程度のギャップができることを発見した。またこの物質における光照射効果を調べた。可視光レーザー照射によって抵抗は劇的に変化するにも関わらず、スペクトルの形は変化しなかった。したがって絶縁相の短距離の電荷秩序は光照射中も維持されていることがわかった。
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Research Products
(6 results)
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[Presentation] Photoemission study of NiGa_2S_4, FeGa_2S_4, and Fe_2Ga_2S_52008
Author(s)
K. Takubo, J. -Y. Son, T. Mizokawa, Y. Nambu, K. Tonomura, O. Sakai, K. Onuma, S. Nakatsuji, Y. Maeno
Organizer
American Phys. Soc March Meeting
Place of Presentation
New Orleans Conv. Center
Year and Date
2008-03-08
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