2008 Fiscal Year Annual Research Report
南極周回JACEE原子核乾板による反陽子フラックス測定
Project/Area Number |
07J07293
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
宮本 成悟 Nagoya University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 宇宙線 / 素粒子 / 原子核乾板 / 自動飛跡読み取り |
Research Abstract |
1次起源の宇宙線反陽子の存在は、理論ではブラックホールの蒸発、超対称性粒子の対消滅などが起源とされている。1998年に発表されたBESS実験の反陽子フラックスデータでは、(高エネルギー宇宙線が星間物質に衝突し生じる)2次起源のものが支配的であるが、1GeV以下については、統計エラーの範囲内ではあるが、1次起源の反陽子の存在が示唆された。 1次起源の反陽子の存在の有無を確認する為には、より低いエネルギー(100MeV以下)をもつ宇宙線反陽子を捉えることが重要である。BESS実験と同様に、気球で南極上空高度35kmを2週間に渡って周回したJACEE原子核乾板には、地球磁場の影響を受けずに入ってくる低エネルギーの反陽子の飛跡が蓄えられている。BESS検出器の構造では、BESSは検出器の構造上、200MeVまでの反陽子しか捕らえることが出来ない。これに対し、JACEEでは下限100MeV(〜残留大気5.0g/cm^2の影響)までの反陽子を捕らえることができる。原子核乾板はは荷電粒子に対してサブミクロンの位置分解能を持つ、非常に優れた3次元飛跡検出器であるため、その位置分解能を活かし、対消滅反応を検出することで反陽子を同定することができ、飛程を測定することで運動エネルギーを決定し、フラックスを求めることができる。原子核乾板を用いて陽子反陽子の対消滅反応をとらえることができることは、先人の研究により実証済みである。残された問題点は、どのようにして効率よく対消滅反応点を探すか、ということに尽きる。高速自動飛跡読取装置でJACEE乾板の飛跡を読み取った。結果、乾板中の全飛跡を非常に高い信頼性で再構成することに成功した。次のステップとして、対消滅反応の探索を行ったが、有意な結果は得られなかった。
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