2008 Fiscal Year Annual Research Report
混合神経培養系によるシナプス形成の特異性の検証とその分子機構の解析
Project/Area Number |
07J07371
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 祥子 Kyoto University, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 神経細胞の認識機構 / 小脳・顆粒細胞 / シナプス形成 |
Research Abstract |
シナプス形成過程における神経細胞の認識機構を研究するために、培養系において神経細胞は標的を認識することができるのかを検証した。具体的には、マウス脳の外稙片と分散神経細胞の共培養の系を確立し、小脳回路を形成している神経細胞同士を共培養した。小脳の顆粒細胞と呼ばれる神経細胞は橋核から投射してくる軸索と特異的にシナプスを形成するが、下オリーブ核から小脳に投射してくる軸索とはシナプスを形成しない。そこで、培養下においてでも、顆粒細胞は橋核の軸索とシナプスを形成するのか、また下オリーブ核の軸索とはシナプスを形成しないのかを調べた。また、生体内では顆粒細胞と出会わない海馬の軸索とも共培養を行いシナプス形成がどうなるのか観察した。 まず、どのような組み合わせの培養下でも、軸索と樹状突起が接触した部分にシナプスは不特異的に形成されることが明らかになった。しかしながら、正しい組み合わせ、誤った組み合わせでは形成されるシナプスの形態に違いがあった。生体内で顆粒細胞と橋核の軸索は特殊な形態のシナプスを形成するが、培養下でおいても正しい組み合わせではそれとよく似た形態のシナプスが形成された。一方、誤った組み合わせではそのような形態のシナプスは再現されなかった。 さらに形態的に差があったこれらのシナプスが生理的な活性を持っているかを調べるため、FM色素を使いシナプスのリサイクリングを観察した。その結果、培養下においても正しい組み合わせでは正常なシナプスのリサイクリングが起きるのに対し、誤った組み合わせで形成されるシナプスは排出機構に異常があることが示唆される結果を得た。これらの結果は、培養下においてでも小脳の顆粒細胞は正しい標的の軸索とのみ形態的、機能的に正常なシナプスを形成することができることを示しており、これは顆粒細胞と橋核の軸索の間には、培養下でも標的を認識する機構を保持されることを示唆している。
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Research Products
(2 results)