2008 Fiscal Year Annual Research Report
骨学的形質を用いた獣脚類の呼吸器系進化の解析〜生物進化と環境変動の対応を探る試み
Project/Area Number |
07J07439
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平沢 達矢 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 進化 / 脊椎動物 / 鳥類 / 恐竜 / 化石 / 中生代 / 胸郭 / 呼吸器 |
Research Abstract |
平成20年4月から6月にかけて、これまでに自身で集めた獣脚類化石の骨学的形質データについて解析を行った。複数の分岐図から獣脚類全体の系統図を作成し、ソフトウェアMesquiteを用いて、胸部骨格の形質進化を最節約的に復元した。また、各タクサが産出する地層の年代データを集め、系統図に年代を入れることにより、それぞれの形質がいつ変化したのかを明らかにした。これらの形質変化は、胸郭の変形運動の自由度を下げ、換気ポンプとしての機械的効率を上げる効果をもたらすものと考えられる。そこで予察的にBerner(2006:Geochimica et Cosmochimica Acta)にある顕生代の大気中酸素濃度、二酸化炭素濃度のシミュレーション復元と、胸郭構造の進化を比較したところ、大まかに見て、胸部肋骨の骨化や鉤状突起の骨化のような現生鳥類の骨格を特徴づける形質変化は、酸素濃度が低く二酸化炭素濃度が高かった後期ジュラ紀に起こったようである。これは現段階ではもちろん予察的だが、注目すべき点であろう。 9月には、日本-モンゴル共同古生物学調査(JMJPE)のメンバーとして、東ゴビ地域の下部白亜系の地層でフィールド調査に参加した。これは、クリーニング済の標本からは得られないような産状などの情報を、専門家の目で見て吟味しようという試みである。今回は、通常の調査では採集されないような肋骨化石も採集され、本研究に用いることができることとなった。また、モンゴル古生物学センターに所蔵されているほぼ全ての獣脚類標本について観察・計測を行った。 持ち帰った獣脚類肋骨の標本は、薄片を作成し、骨組織を調べるのに用いた。その結果、肋骨断面では、一部に血管の定向配列が見られることが確認された。これは、筋の付着部位と対応している可能性があるが、シヤーピー線維の痕跡は不明瞭であったため、断定はできない。
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