2007 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属錯体の励起状態ダイナミクスを取り扱う理論的手法の開発と光物性の解明
Project/Area Number |
07J07505
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
齋藤 健 Kyoto University, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 遷移金属錯体 / 励起状態 / ダイナミクス / 理論化学 / 計算化学 / 光化学 / 構造緩和 / 項間交差 |
Research Abstract |
遷移金属錯体を発光素子や化学センサといった光学材料へ応用する場合、励起状態における動的過程、すなわち、励起状態ダイナミクスの詳細を明らかにする必要がある。平成19年度は、励起状態ダイナミクスを構成する要素の中でも特に重要な構造緩和と項間交差に注目し、理論化学的検討を行った。 構造緩和に関しては、液体状態の2-メチルテトラヒドロフランと凝固した同溶媒中とで異なる発光波長を示す白金(II)二核錯体を取り上げ、その発光機構を理論的に検討した。そして、三重項励起状態に、最安定構造だけでなく準安定構造も存在することを明らかにした。さらに、液体の溶媒中では最安定構造への大きな構造変化が起きること、凝固した溶媒中では準安定構造の存在によって構造緩和がほとんど起こらないことを示し、これが2つの溶媒中で発光波長が異なる原因であることを明らかにした。 項間交差に関しては、アセトニトリル溶媒中で発光を示す白金(II)錯体と示さない白金(II)錯体の2種類を取り上げ、項間交差に大きく寄与する一重項励起状態と三重項励起状態のスピシ-軌道相互作用について検討した。そして、ピリジンチオラト架橋錯体においては、励起状態の対称性が低いためにスピン-軌道相互作用が強くなり、三重項励起状態への項間交差とその後の発光が起きることを明らかにした。一方、ピラゾラト架橋錯体においては、励起状態の対称性が高いためにスピン-軌道相互作用が弱くなり、三重項励起状態へ項間交差せずに基底状態へ無放射失活することを明らかにした。 上記の2種類の研究成果は、検討例の少ない励起状態ダイナミクスの一部の要素に関して、その詳細を理論的に明らかにしたものであり、光学材料としての新規遷移金属錯体を設計する上で重要な指針になると言える。
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Research Products
(5 results)