2007 Fiscal Year Annual Research Report
近現代日米間における「環境問題」をめぐる言説体系の翻訳論的・クロスジャンル的研究
Project/Area Number |
07J07598
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
信岡 朝子 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 環境問題 / 写真 / 表象 / 日米 / 異文化理解 |
Research Abstract |
本研究は、主に欧米を起源とする近代的環境保護思想の「普遍性」への信奉を見直し、その問題点を明らかにするという狙いのもとに、日米間での「環境問題」の把握の仕方、あるいは「表象」をめぐる葛藤や軋礫が発生するメカニズムを、異文化理解と翻訳論的・クロスジャンル的な視点から、いくつかの事例を取り上げつつ多角的に考察することを目指す。とりわけ「環境問題と異文化遭遇」、さらに「環境と表象」という二つのテーマが折り重なった地点を中心に、19世紀末から今日までの日米間に見られる、環境問題にまつわる議論や対話の不調、あるいは主張や認識のすれ違いが、双方が依拠する自然観や、歴史的・文化的背景の違い、さらにその表象の仕方の無意識的な「差異」によってもたらされるという点を、複数のケーススタディーの積み重ねを通じて、幅広く検討するという点に特徴がある。 平成19年度は、本論が取り扱う複数の課題の中でも、環境とイメージとの関係性を最も顕著に示しうるであろう、アメリカの報道写真家ユージン・スミスと、同時代の日本のジャーナリストたちによる「水俣」をめぐる写真表象の比較研究に、焦点をしぼる形で研究活動を行った。具体的な作業としては、まず水俣病事件をめぐる国内の先行研究の動向を整理し、また一次資料となり得る水俣関連の写真集や、過去に開催された水俣病、あるいはユージン・スミスをテーマとした写真展の調査、さらに水俣病や、ユージン・スミスの水俣写真に関連する雑誌記事の調査などを、東京大学付属図書館などを中心に行った。また、ニューメキシコ州立大学付属図書館、あるいは同大学美術センターなどにおいて、ユージン・スミス関連の雑誌記事などを重点的に調査・集収し、また北米における環境とメディア表象全般に関わる最新の研究動向を調査する機会に恵まれた。こうして収集した資料を元に、現在、ユージン・スミスのドキュメンタリー写真集Minamata(1975)をはじめとする、水俣病のメディア表象に関する論文を執筆中であり、今後は国内外での学会発表、あるいは学会誌への投稿などを予定している。
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