2007 Fiscal Year Annual Research Report
古代イネDNA分析による栽培イネにおける人為選択標的遺伝子の進化的解析
Project/Area Number |
07J07627
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
熊谷 真彦 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特則研究員(DC1)
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Keywords | 炭化米 / ジャポニカ / インディカ / 葉緑体DNA / DNA分析 / 唐古鍵遺跡 / 陣が峰遺跡 |
Research Abstract |
炭化米のジャポニカ/インディカの判定。 これまでの現生イネの分子系統学的な解析から得られた、葉緑体DNAに見られるジャポニカ特異的なSNP1サイト、Insert2サイト、インディカ特異的なSNP1サイトについて、ジャポニカ種20系統、インディカ種20系統についてPCRダイレクトシークエンス法により配列決定を行いこれらの変異が固定しているのかを調べた。その結果、ジャポニカ特異的なInsert1サイト以外については固定していることが確かめられた。固定していなかったInsertサイトについても19/20と高頻度で変異が見られたので、このサイトも含めて、炭化米DNAの増幅に適したPCR条件、酵素の検討を行った。その結果、適していると考えられた条件・プライマーセットを見つけた。その条件を用いて唐古鍵遺跡(弥生)、青谷上寺地遺跡(弥生)、陣が峰遺跡(中世)、根来寺遺跡(中世)から出土した炭化米、また上東遺跡(弥生)から出土した土器に付着した炭化物についてDNA抽出とPCRによる増幅を試みた。陣が峰遺跡、唐古鍵遺跡から出土した炭化米において複数試料でDNAの増幅に成功した。これら以外の遺跡の炭化米については残念ながら増幅できなかった。増幅されたDNA配列をシークエンスした結果、両遺跡において、ジャポニカ特異的な変異を持つ、すなわち両遺跡では現代のジャポニカにつながる系統を栽培していたことが明らかとなった。ジャポニカ、インディカを確実に分類可能なマーカーを用いて炭化米のDNA分析に成功した例はこれまで報告されていないので意義のある結果である。しかし炭化米の増幅効率は陣が峰遺跡で20-30%、唐古鍵遺跡では5%以下と低かった。今後はさらにこれらの増幅効率の向上を目指し、プライマーの改良を行う必要がある。唐古鍵遺跡は弥生時代における代表的な集落の遺跡であるため、この遺跡から出土した炭化米のDNA分析は弥生時代の栽培イネの遺伝的背景を明らかにする上で重要である。
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