Research Abstract |
本年度は,まず,地域公共施設の再整備を考えるための基礎として,既存地域公共施設の利用構造を個別に精緻に把握するための需要構造分析手法開発を行った.特に貸し室等の定員のある空間を有する公共施設を取り上げ,満員による施設の利用不可能性を考慮した,基本的な利用構造推定モデルの開発を行った.この際,介在機会モデルを援用することで,競合して立地する施設を勘案し,他施設との利用圏の重なりの影響を考慮した.結果として,距離別に見れば,ある施設を最近隣施設とする利用者よりも,その施設を最近隣以遠の施設とする利用者の方が,施設までの移動距離が短くなり,当該施設の利用構造と多重ボロノイ図の関連が示唆された. 次に,再整備手法モデルの構築を行った.本研究で取り上げる問題は本質的に,施設を順次建設・配置していく過程の逆をたどるものである.施設を順次建設・配置していく場合の理論的なアプローチとしては,多くの既往研究があるものの,その逆順序については未知である.そこで,まず,基本となる施設閉鎖モデルを開発した.この際,施設閉鎖計画案の評価について,逐次評価・最終評価の2通りを想定し,それぞれで最適配置案が大幅に異なることが把握できた.さらに,開発したモデルを,例として,東京都多摩市に当てはめた試算をおこなった.多摩市を取り上げる大きな理由は,申請者の研究業績により,地域コミュニティの勘案の上で欠かせない町丁目単位の詳細な人口予測結果があるためである.そこで,将来的な人口動態の変化に起因した公共施設の将来需要・公共施設の建築年数・公立学校の空室率などを最適化の判断基準とした,応用型の再整備手法モデルの開発も行った.
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