2009 Fiscal Year Annual Research Report
階層構造を持つ高分子複合体系におけるエネルギー論の構築
Project/Area Number |
07J07662
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
義永 那津人 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ソフトマター物理学 / 非平衡統計物理 / 生物物理 |
Research Abstract |
(i)温度勾配によって駆動される粒子の運動 温度勾配の下で粒子が一方向に運動することは古くから経験的に知られているが、その物理的なメカニズムについての議論はまだ明らかではない。ここでは、粒子の周りの流体場の計算を行い粒子の運動速度を理論的に導き、それを実験と比較した結果、二つの結果は非常によく合うことが分かった。粒子の運動は、外力によって押されているのではなく、また圧力差が生じているわけでもなく、温度勾配によって生じる粒子の周りの流れによって駆動されることを示している。 (ii)細胞におけるストレスファイバーの極性の自発的形成 細胞内ではストレスファイバーと呼ばれる筋肉のような役割をしているバンドル状のたんぱく質群が存在する。ストレスファイバーは弾性体として細胞の力学的性質を担っているが、重要なことはこのバンドルは静的なものではなく動的で非平衡状態を保っている。ストレスファイバーは、フィラメント状のたんぱく質が架橋剤によって寄り集まってバンドルを形成したものであり、さらにミオシンと呼ばれる分子モーターがエネルギーを消費しながらストレスを発生している。その結果ストレスファイバーは収縮することができる。バンドルを構成するファイラメントは極性を持っており、物理学的に言うとこれはいわばactive polar nematic elastomerと呼ぶべきものである。 我々は、このような系に対してマクロな連続体力学的な立場から極性の分布を理論的に計算した。その結果、分子モーターの働きが弱い時には極性は単調に変化し、そのはたらきが強くなったときには極性が周期的に分布する構造(sarcomereと呼ばれる筋肉と類似した構造)が得られることを示した。
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Research Products
(2 results)