2009 Fiscal Year Annual Research Report
ウイルス感染を利用した高次脳機能障害の分子機序の解明
Project/Area Number |
07J07682
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
本田 知之 Osaka University, 微生物病研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | ボルナ病ウイルス / 精神疾患 / グリア細胞 / 内在化 |
Research Abstract |
精神疾患は躁鬱病や統合失調症などに代表される高次脳機能障害である。多くの精神疾患では、その発症機序として「脆弱性-ストレス」モデルが提唱されている。私どもの研究室では、脆弱性もしくはストレスによる高次脳機能障害の要因としてボルナ病ウイルス(BDV)を報告してきた。BDVは、中枢神経系に持続感染するRNAウイルスである。BDVを感染させたラットは、自閉症様の行動異常を示すことが知られている。本研究では、BDV感染がどのように脳高次機能障害の脆弱性に関与するかを明らかにすることで、精神疾患の発症脆弱性の分子機序の解明を明らかにすることを目的とした。本年度の研究において、BDV感染による高次脳機能障害について以下の結果を得た。これまでの3年間の結果から本研究の目的は十分達成されたと考えられる。 1)BDVの病原性に重要な働きをするリン酸化タンパク質Pを発現する細胞で変化する遺伝子群をマイクロアレイ解析にて検討した。その中より、P発現マウスにおける病原性に関与するシグナル経路を明らかにし、それが自閉症における共通シグナル経路である可能性を示した。 2)BDVマウス馴化株HOT6株がマウスに対して神経病原性があることを明らかにした。 3)BDVを用いたウイルスベクターを利用し、Alzheimer病治療ウイルスを作成した。 4)BDVが自身のRNAを逆転写し、cDNAを作成していることを明らかにした。またこれらのcDNAが宿主ゲノムに挿入されていることも明らかにした。 5)BDVレセプターを同定するため、BDVの膜タンパク質GとヒトIgGとのタンパク質と結合するタンパク質としてBipを分離した。BiPをコードする遺伝子をクローニンングし、Gとの結合を確認した。またBipが、神経シナプス表面に存在し、BDVレセプターとして機能することを明らかにした。
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Research Products
(8 results)