2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J07734
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 悠介 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 能楽 / 金春禅竹 |
Research Abstract |
平成20年度は、平成19年度に引き続き金春禅竹の『明宿集』について関連資料の収集につとめ、注釈作業を行う一方、特に禅竹の能楽論体系「六輪一露説」についての研究を進めた。六輪一露説は、「寿輪」から始まる六つの円相「六輪」と、「一露」と呼ばれる利釼の図を伴って表現されている。その代表的なテクストは、康正元年(一四五五)に成立した『六輪一露之記』であり、六輪と一露それぞれに禅竹の詞と図、東大寺戒壇院の僧・志玉の注が配され、その後に一条兼良の注と、禅僧・南江宗〓の跋が加わっている。禅竹は生涯を通してこの能楽論を発展させたが、六輪一露説は当初は[禅竹の詞と図、および志玉加注]だけの形で完結していたと推定されている。西教寺正教蔵にある『六輪尺』のように、そうした初期形態を示す伝本が現存しており、それは『六輪一露之記』の成立を十一年遡る文安元年(一四四四)には成立していた。このように初期段階から六輪一露説において少ながらぬ位置を占めていた志玉の注を検討し、これまで典拠不明とされてきた部分の多くについて典拠を指摘するとともに、その意義を考える論文を「六輪一露説の志玉加注について」として『藝文研究』(慶應義塾大学藝文学会)第95号に発表した。こうした典拠の解明により、澄観の法界思想をはじめとした華厳学を主体とする志玉の注の枠組みと、禅竹自身の論、特に能の生成を円環構造でとらえる思想との相応関係がみえてきた。
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Research Products
(1 results)