2007 Fiscal Year Annual Research Report
アリストテレス哲学の研究-『自然学』を出発点として-
Project/Area Number |
07J07736
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大木 崇 Kyoto University, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | アリストテレス / 『自然学』 / エレア派 / 生成変化 / アポリア / 基体 |
Research Abstract |
『自然学』A巻第七章においてアリストテレスは、生成変化の分析を通して三つの原理-基体、形相、欠如態-を析出する。「基体(素材)」の概念が導入される場所として知られるこの第七章は、また同時に、第八章のエレア派のアポリアを解決するための前提となる議論とも見なされている。第八章の内実に関しては、近年多くの研究者が論じているが、本研究は、これまでにほとんど解明されてこなかった、「アポリアの解決は実際にどのように行われているのか」という問題を考察することを通じて、アリストテレスの「基体」概念を明確にする意味をもつものである。「あるもの」はすでに「ある」のだから生成しない、「あらぬもの」からは何も生成しないという議論によって、ものが生成したり変化することは不可能であるとエレア派は主張する。これに対してアリストテレスは、第七章で得られた、生成変化するものはすべて複合的な存在であるというテーゼを用いて、生成の起点にあるものは(基体と欠如態との複合である)「あらぬものとしてのあるもの」であるという解決を与えている(先行研究に見られる、「生成変化の前後を通じての同一性を保証するような『存続する基体』」は、テクストに即していないことが明らかとされた)。この解釈にとって要となるのは「付帯性」の意味であるが、本研究では古代の注釈なども援用しつつ、少なくとも三つの意味が区別されるべきことを指摘した。それと同時に、しばしば誤解されてきた「医者」などの例を整合的に読むことも可能となる。さらに、この『自然学』第八章のもつ(第七章と比べての)難解さには理由があるということを、アリストテレス哲学における探究の方法という観点から指摘した。
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Research Products
(3 results)