2008 Fiscal Year Annual Research Report
高密度QCDにおける動的対称性の破れとクォーク-ハドロンクロスオーバー現象
Project/Area Number |
07J07907
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山本 直希 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 理論核物理 / カラー超伝導 |
Research Abstract |
量子色力学(QCD)は有限温度・密度において、多彩な物質相を呈する。低温・低密度ではクォークの閉じ込め相であるハドロン相、高温ではクォーク・グルーオン・プラズマ相、更に低温・高密度ではクォークが超伝導状態となったカラー超伝導相が発現するとことが理論的に分かっている。特に、ハドロン相とカラー超伝導の中間密度領域について、その相構造がどうなっているのか、謎に包まれていた。 申請者は昨年度までに、QCDの対称性のみから中間密度領域の相構造を調べ、特に軸性異常と呼ばれる現象によって、ハドロシ相からカラー超伝導相へはクロスオーバー(相転移が存在しないこと)である可能性があることを示した。今年度はこのクロスオーバー現象の動的なメカニズムを調べるため、QCDのトポロジカルな励起であるインスタントンに着目した。高密度QCDの低エネルギー理論が双対変換に上っで4次元的なクーロン相互作用するインスタントンの多体系に書き直せることを利用して、インスンタントン多体系が高密度では常にプテズマのように解離した状態として振舞い、蜜度を変えても相転移が起こらないことをくりこみ群の手法を用いて解析的に証明した。これば、QCDの高密度カイラル相転移がまきに凝縮系物理の2次元O(2)スピン系で知られるKosterlitz-Thouless相転移の4次元版になっていることを意味する。次元の違いを反映して、2次元では2次相転移であるが、4次元ではクロスオーバーとなる。低密度でのQCD真空はインスタントン多体系が液体のように振舞うことが既に知られているので、申請者の結果はインスンタントン多体系が密度を上げるにつれて、低密度でのインスタントン液体状態から高密度でのインスタントン・プラズマ状態に連続的に移り変わっていき、それに伴ってカイラル凝縮の値も有限のまま連続的に変化していく、という新しい描像を示唆している。
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