2007 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本における<不安の文学>の系譜とその思想史的背景に関する総合的研究
Project/Area Number |
07J07912
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
藤井 貴志 Gakushuin University, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 日本近代文学 / 芥川龍之介 / 比較思想史 / 比較文学 / 美学イデオロギー / アナーキズム |
Research Abstract |
「近代日本における<不安の文学>の系譜とその思想史的背景に関する総合的研究」は通時的/共時的に<不安の文学>の系譜を辿り直し、近代日本における<不安>の諸相を両対戦間の世界的文脈の中へ動態化する試みである。その際、重要なメルクマールとなるのは、1927年に<ぼんやりした不安>と言い遺して自殺した芥川龍之介の存在である。「一九二七-<ぼんやりした不安>再考」(『國文学』2008.2)は、芥川の死と同じ1927年に主著『存在と時間』を刊行したM・ハイデガーを比較思想史的に導入した論文である。『存在と時間』の第40節は「現存在の際立った開示性としての不安という根本情状性」と題された哲学的考察であった。この論文では、芥川を中心とした<不安>の磁場が個別日本的文脈を離脱し、ハイデガーの<不安の哲学>と共振するような世界的文脈へと接続されていく過程を、そのイデオロギー的危うさも含めて共時的に明らかにしている。その際、両者を媒介するコンテクストとして、留学中にハイデガーに師事し、やがて昭和十年前後の<シェストフ的不安>を準備する三木清の存在を前景化している。受容史を含めたこうした試みは、芥川の死を経て、1930年代の危機の時代へと到る<不安の文学>の系譜を再考する上で不可欠の作業であり、今後の研究を継続する為の土台となる意義を有する。初年度には、<不安の文学>関連図書の重点的購入や文献資料の収集・調査を計画していたが、予定通り今後の論文執筆の為の基礎的作業を行うことが出来た。<不安>というコードに焦点化することによって日本近代文学史のラディカルな書き換えを目的とする本研究の今後の成果に直結するはずである。
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Research Products
(1 results)