2009 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本における<不安の文学>の系譜とその思想史的背景に関する総合的研究
Project/Area Number |
07J07912
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
藤井 貴志 Gakushuin University, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 日本近代文学 / 芥川龍之介 / 比較思想史 / 比較文学 / 美学イデオロギー / アナーキズム |
Research Abstract |
平成21年度、また特別研究員の任期3年間における研究成果は、平成22年2月に刊行された拙著『芥川龍之介-<不安>の諸相と美学イデオロギー』(笠間書院)に纏めることができた。本書の第IV部に収録された3本の論文には、「近代日本における<不安の文学>の系譜とその思想史的背景に関する総合的研究」という題目の当該研究の成果が凝縮されている。具体的には、九章「昭和十年前後<不安の文学>をめぐる諸問題」において1927年に<ぼんやりした不安>と言い遺して自殺した芥川龍之介から、1930年代にかけての<不安>をめぐる巨視的な見取図を示し、十章「<シェストフ的不安>と<ぼんやした不安>」ならびに終章「ハイデガーと「羅生門」-<不安>の行方」においてより微視的な分析と考察を行った。研究書という形に纏められることで、通時的/共時的に<不安の文学>の系譜を辿り直し、近代日本における<不安>の諸相を両対戦間の世界的文脈の中へ動態化する試みは一定度の達成を得ることが出来たと考えている。また、今年度に学術誌に発表した芥川論「「馬の脚」-生はべつのところにある」も芥川における<不安>を考える時、抜きにはできない重要な論文となった。加えて、平成22年1月の国際シンポジウム「エコクリティシズムと日本文学研究」において口頭発表した「村上春樹『1Q84』とコミューンの系譜」も、現代における<不安>の問題として、当該研究と密接に関わるものである。任期終了後に当該研究をより広く継続させていく展望を示したという意味でも、またアウトリーチ的観点からも、重要な成果であったと考えている。
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Research Products
(3 results)