2007 Fiscal Year Annual Research Report
活性酸素をシグナルとして利用した蛋白質の構造と機能に関する研究
Project/Area Number |
07J08040
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北辻 千展 Kyoto University, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 酸化修飾 / 過酸化水素 / ヒドロキシルラジカル / ヘム / 窒素固定細菌 / 転写調節因子 / 質量分析 / ICP発光分光分析 |
Research Abstract |
窒素固定細菌Bradyrhizobium japonicum由来のIron response regulator(Irr)は、鉄濃度に応じてポルフィリン合成酵素の転写を調節する。鉄濃度が低い時は、Irrはヘム合成酵素の転写を抑制し、鉄濃度が正常な時、Irrはヘムとの結合後、自らを酸化修飾して不活性化し、ヘム合成酵素の転写が促進される。しかし、Irrがヘムを利用して不活性な酸素をどのような酸化活性種に変換するのか、さらに、Irrにおけるどの残基を酸化することで不活性化するのかは不明であった。本研究ではまず、酸化活性種の特定のため、ヘムと結合したIrrを酸化活性種に対する除去剤存在下で酸化修飾反応を行い、酸化修飾残基を認識する抗体を用いてIrrの酸化修飾を検出した。その結果、過酸化水素の除去剤カタラーゼの添加時、Irrの酸化が抑制された。この結果は、過酸化水素がIrrの酸化に関与することを示している。しかし、過酸化水素はアミノ酸を酸化するほどの反応性を有していない。そこで、過酸化水素はIrrにより反応性の高い活性種に変換されると考えられた。エCP発光分光分析により、Irrが鉄イオンを含むタンパク質であることが分かったことから、Irrは、産生された過酸化水素を鉄イオンと反応させて活性種ヒドロキシルラジカルに変換し、ヒドロキシルラジカルを用いて自らを酸化し不活性化すると考えられる。さらに質量分析により、鉄結合残基であるHisが部位特異的に酸化されることが分かった。このHisの酸化により鉄イオンに対するアフィニティが低くなり、構造が不安定化して不活性化するものと考えられる。以上、本研究によりIrrのヘムを利用した酸化修飾・不活性化機構を明らかにした。
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Research Products
(4 results)