2007 Fiscal Year Annual Research Report
エージェントを用いた金融市場における統計的性質の解明
Project/Area Number |
07J08063
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 恭子 The University of Tokyo, 大学院・経済学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | agent-based model / Fillancial Stylized Facts / asymmetric information |
Research Abstract |
ファイナンス研究において、伝統的な金融理論モデルでは説明できない実証的事実であるアノマリーやパズルが注目を集めている。これらの統計的性質を説明するためには、より洗練されたモデルの構築が必要となる。統計的性質を説明する要因として、当該年度では『情報伝達の遅延』に着目した。しかしこのような要因を均衡モデルに組み込み、さらにそのモデルの持つ均衡経路の統計的性質を解析的に分析するのは非常に難しい。そのため、これらの性質を生み出す要因は解明されていない。そこで、このような分析上の問題に対しエージェントベース・シミュレーションを用いることで、解析的に分析することが困難であった統計的性質を明らかにし、既に知られている性質との整合性の検証を行なった。具体的には、複数のエージェントに情報伝達可能範囲を持たせ、それらのエージェントが移動しぶつかりあうことで情報交換や収集できるモデルを構築し、そこから得られる収益率分布の性質、特に収益率分布の自己相関や大尖度、収益率分散の正の自己相関といった統計的事実をLjung & Box's Q-statistics test等を用いて検証した。これらの統計的性質に注目した理由は、多くの実証分析で観測される頑強な性質であること、また実務においても非常に重要な性質だからである。実務においてこのような統計的性質が重要となる例としては、デリバティブへの応用があげられる。一般にデリバティブの正確な価格を計算するには、分散の正しい計測が必要だからである。また学術面においても収益率分散の不均一な状況を統計モデルに取り込もうという流れがある。ARCHモデルやGARCHモデルがその例である。このように価格形成に重要な役割を果たす要因を特定化していくことで、実務で使われる資産価格付けモデルの洗練を促し、資産価格の予測にインパクトをあたえる意味で意義のある研究であるといえる。
|
Research Products
(4 results)