2007 Fiscal Year Annual Research Report
倉西構造の方法による境界付き擬正則曲線のモジュライと、数え上げ不変量に関する研究
Project/Area Number |
07J08083
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
二木 昌宏 The University of Tokyo, 大学院・数理科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | シンプレクティック幾何 / 擬正則曲線 / フレアーホモロジー / 深谷圏 / ホモロジー的ミラー対称性 / ランダウ=ギンツブルグ模型 |
Research Abstract |
境界付き擬正則曲線のモジュライによる代表的なシンプレクティック幾何の不変量に、深谷圏がある.本年度はその一変種である、ランダウ=ギンツブルグ模型の有向深谷圏について研究した.特に有向深谷圏がランダウ=ギンツブルグ模型の安定化(stabilization)で不変であることを証明し、現在論文を執筆中である. ランダウ=ギンツブルグ模型の有向深谷圏は、ホモロジー的ミラー対称性予想をトーリックファノ多様体に拡張する文脈でPaul Seidelにより導入された(2000).ランダウ=ギンツブルグ模型の消滅サイクルの基底を対象とするA無限大圏であり、対象間の射の空間はラグランジュ交叉のフレアーホモロジー、射の(高次の)合成は擬正則円盤の数え上げ(モジュライ空間上での定数関数1の積分)を用いて定義される.消滅サイクルの基底の取り方には任意性があるが、有向深谷圏の導来圏を取ることによりランダウ=ギンツブルグ模型の不変量となる.有向深谷圏はミラーの連接層の導来圏と同値になると期待されているが、現在のところ原理的な証明方法はなく、両者の個別的な計算に依存している. 有向深谷圏は、Seidel(2000)、Auroux-Katzarkov-Orlov(2004,2005)により重み付き射影空間のある場合に、また植田-山崎(2007)によりランダウ=ギンツブルグ模型が2次元の場合(トーリック・デルペッツォ曲面のミラー)にトロピカル幾何の概念であるコアメーバを用いて計算されたが、いずれも消滅サイクルが具体的に表示できる特殊事情を用いており、即座の一般化は難しい.ランダウ=ギンツブルグ模型の安定化とは自明な方向を直積する操作を差し、次元を上げる操作のひとつである.本研究は、より一般的なランダウ=ギンツブルグ模型に関して有向深谷圏を計算する際の基本的なツールとなり得るものである.
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