2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J08086
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
土屋 聡 Tokyo Gakugei University, 教育学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 中国古典文学 / 六朝時代 / 文人 / 書誌学 / 国際情報交換 / 中国 |
Research Abstract |
平成20年度は、以下の二点の課題について調査・研究を行った。 一、六朝宋元嘉年間の政治と文学 文人官僚の地位の変遷を明らかにする上で、彼らの政治・外交面における活躍、特に「世論」の形成に果たした役割を解明することは、報告者の課題のひとつである。そこで報告者は、六朝宋の文帝(407〜453)元嘉年間(424〜453)後半の北伐に向けての政治状況と文人の関わりについて調査した。特に、鮑照(414?〜466)「河清頌」の制作、袁淑(408〜453)「防禦索虜議」、張暢(408〜457)と北魏使節との討論など、旧劉義慶幕下の文人たちの動向に注目し、大規模な戦争に向かう時代潮流の中で、文人官僚が文学の方面から世論の形成に参画した経緯を明らかにした。 二、漢魏六朝文人の別集編纂状況についての調査 報告者は、後漢末から六朝にかけての主要な文人(蔡〓[132?〜192]・陶淵明[365〜427]・鮑照[414?〜466])の『別集(個人詩文集)』の佚文収集や諸版本の書誌学的調査を行った。その結果、平成19年度研究計画の一環として調査を行った上海図書館蔵『鮑氏集』十巻(以下、上海図書館本)について、趙宋時代以降の六朝文学受容の在り方を窺い知る上での興味深い事実が判明した。当初、報告者は上海図書館本について、旧蔵者の孫毓修(1871〜1923)が『四部叢刊』所収上海涵芬楼影印毛斧季校宋本『鮑氏集』(以下、『四部叢刊』本)を敷き写したものと考えてきたが、その後の継続調査では、『四部叢刊』本とは異なる第二の毛校宋本を写したと思われる異同が検出された。しかも、その中には、趙宋人が鮑照の使用語彙やその作品の詩型について厳密的確な検討を行った痕跡を示す重要な異同が含まれる。現在のところ『鮑氏集』の代表的な宋本として重視される『四部叢刊』本は、毛〓(字は斧季。1640〜1713)が宋本に拠って校讎したものであり、宋本の原状が窺われる貴重なテキストである。しかし、同本が校本である以上、校正の不備が残る可能性は否定できない。上海図書館本は、これを補正できるのであって、鮑照作品の本文批判研究において、今後参照するべき重要な資料と思われる。
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Research Products
(2 results)