2007 Fiscal Year Annual Research Report
曲がった空間における臨界現象と幾何学的対称性の効果
Project/Area Number |
07J08173
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Research Institution | Hokkaido University |
Research Fellow |
坂庭 康仁 Hokkaido University, 大学院・工学研究科, 特別研究委員(DC1)
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Keywords | 相転移 / イジングスピン / 臨界現象 / 臨界指数 / 曲がった空間 / 曲率 / 国際情報交換 / 韓国:フランス |
Research Abstract |
臨界現象とは、相(物質の構造や性質が均一な部分)が温度・圧力・磁場などの外的要因で別の相へと変化(これを相転移と呼ぶ)する際の臨界点近傍での物理現象のことである。その臨界点では、原子または分子同士のミクロな相互関係がマクロな性質(物質全体)に影響を及ぼすようになる。相転移の身近な例としてはH2Oの氷・水・水蒸気の三態の変化や、鉄・磁石の変化などがある。 本研究は、この臨界現象に与える空間の曲がりの効果を明らかにすることを目的としている。そこで、イジング格子模型(相転移を観測できる最も簡素化されたモデル)を曲面上に配置し、コンピュータシミュレーションで臨界現象を調べた。具体的には、曲面上でなければ成立しない4種類のイジング正多角形格子で、温度変化に対する相転移を観測し、臨界指数(臨界現象を特徴付ける数値)を用いて、曲面と平面の臨界的性質を比較した。 次に結果を説明する。空間が曲がっていない時(平面上の時)はイジング格子模型がどんな形(三角・四角・六角)で作られていても、平面上に定義されてさえいれば臨界指数は一致する(普遍的である)ことが証明されている。ところが今回、曲面上に定義した格子では形(三角・四角・五角・七角)の違いにより臨界指数に差が出ることが明らかとなった。この結果より、曲率を付加することで系の臨界的性質が変わることが明らかとなった。このことは、磁性薄膜や液晶面などを曲げたり歪めたりすることによって性質をコントロールできる可能性を示唆している。 さらに、境界(格子系の端)の効果が曲面上での臨界的性質に変更を及ぼすことが示唆された。これは境界の効果を取り除いた計算で、曲面上の4種類のイジング格子模型の臨界指数が近しい値を示すようになったという結果から導かれた結論である。これは系の境界条件を変えることで、物質の臨界的性質をコントロールできる可能性を示唆している。
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Research Products
(3 results)