2008 Fiscal Year Annual Research Report
曲がった空間における臨界現象と幾何学的相対称性の効果
Project/Area Number |
07J08173
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
坂庭 康仁 Hokkaido University, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 相転移 / 臨界現象 / イジング模型 / 負曲率曲面 / 幾何学的対称性 |
Research Abstract |
臨界現象とは、相(物質の構造や性質が均一な部分)が温度・圧力・磁場などの外的要因で別の相へと変化(これを相転移と呼ぶ)する際の物理現象のことである。その臨界点近傍では、原子や分子のミクロな相互関係が、突如としてマクロな性質(物質全体)に影響を及ぼすようになる劇的な変化が起こる。その中でも、本研究課題である「物質の曲がりと臨界現象を結びつける研究」は、幾何学的な性質が物性に与える影響を理解しようとする点で、物性理論においても、工業技術への応用という面でも重要な位置にある。特に「負曲率曲面」は、宇宙論・量子重力理論・ひも理論・グラス相の科学・ナノテクノロジーと言った、幅広い階層での研究と関係しており学際的な興味が尽きない。そのような背景のもと、本研究は、イジング格子模型(相転移を観測できる簡素化されたモデル)を用いて数値計算を行い、負曲率曲面上の臨界現象における普遍的な性質を明らかにすることを目的としている。 前年度までの研究では、本来は無視できない境界効果を意識的に削除し、系の中心部の臨界現象を調べた[1,2]。本年度は、境界が存在したままの状態で、系全体がどのような秩序過程を示すのかを詳しく研究した。その結果、 (1)短距離相関が、転移点よりかなり高温でも熱揺らぎに打ち勝って存在しおり、更に系全体に(系の境界部・中心部の別なしに)均一に分布している。 (2)ところが、磁化のドメイン(同じ向きのスピンの塊り)の分布には偏りが生じており、系の中心部では、有限の値の磁化を密かに内包している。 という特異な秩序過程が明らかになった。負曲率曲面イジング格子模型の高温相の描像が明らかになった事が本年度の成果である。また、この結果は近日中に欧文誌に投稿される。 [1]Y.Sakaniwa, I. Hasegawa and H. Shima,J. Magn. Magn. Mater. 310 1401(2007) [2]H. Shima and Y. Sakaniwa, J. Phys. A 39 4921(2006)
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Research Products
(1 results)