2007 Fiscal Year Annual Research Report
脂質ラフトにおける効率的なシグナル伝達の分子機構の解明
Project/Area Number |
07J08175
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
須釜 淳 Tohoku University, 大学院・薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 脂質ラフト / Gタンパク質 / ガングリオシド / 細胞内情報伝達 |
Research Abstract |
脂質ラフトはスフィンゴ糖脂質やコレステロールの集積により形成されるマイクロドメインで、情報伝達を効率的に行う場として注目されている。私は以前にスズメバチ毒のマストパラン(MP)が脂質ラフトのガングリオシドに結合し、脂質ラフトに局在するGタンパク質を細胞質へ遊離させることでGqあるいはGs連関受容体シグナルを抑制することを見いだした。この抑制機構の解明は脂質ラフトの機能や意義を明らかにする手がかりになると考えられる。 そこで本研究ではMPが脂質ラフトを介したシグナル伝達に及ぼす影響についてより詳細な検討を試みた。 始めにMPがGタンパク質を細胞膜から遊離する際にGαとGβγに解離するか解析を行った。PC12細胞をMP処理するとERK1/2のリン酸化が観察されるが、GRK2-C末端を発現させた細胞においては変化がなかったことから、MPによるERK1/2のリン酸化はGβγを介していることが分かった。また、ガングリオシド共存下やノイラミニダーゼ前処理によっても抑制されたことから、この作用はMPとガングリオシドの結合によって引き起こされると考えられた。以上より、MPはガングリオシドに結合して三量体Gタンパク質を解離させた後、Gαを細胞膜から遊離させることでGαシグナルを抑制するが、一方で細胞膜に留まったGβγからのシグナルが活性化されるという機構が推定された。 次にMPの作用が三量体Gタンパク質特異的なものであるかどうか調べるために、T細胞受容体シグナル及びコラーゲンシグナルに対する影響を検討したが、MPはこれらのシグナルには影響しなかった。従って、MPの作用はGタンパク質特異的であることが推測された。 今後より詳細にMPの作用機構を解析することで、その生理的意義の解明やMPと同様の機構でGタンパク質連関受容体シグナルを調節する内在性機構の解明が期待される。
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Research Products
(1 results)