2007 Fiscal Year Annual Research Report
経済移行期の現代中国における村民自治の実態とその変容に関する社会人類学的研究
Project/Area Number |
07J08255
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
緒方 宏海 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 村民自治 / 宗族 / 世帯 / 農村 / 婚姻 / 選挙 / 村民委員会 / ネットワーク |
Research Abstract |
初年度にあたる本年度は、先行研究の蓄積が少なかった論点について、方法論の整備を試みつつ、現地調査によって得た一次資料をもとにして、現代中国における村民委員会の選挙過程と村落の権力の再編の実態を明らかにし、以下の研究成果を得た。 主たる調査対象地域である遼寧省農村と漁村において、村民委員会の選挙過程の調査と文献資料収集を行った。中国の末端社会である農村・漁村の村落内で実施される村民委員会の選挙の投票行動から、村民自治の制度の枠内で、村民個人が目標を達成し問題を解決するために、個人間の関係をどのように操作するかについて分析した。その結果、村民委員会選挙活動の形態変化の事例から、人々が社会変化に対して、新しい事態や状況を構造化し、そのなかに、自らの再生産のプロセスを組み込みつつ、日々の生活の中での、交渉を通して再生産されるものであることを提示した。 またこれまで先行研究の蓄積が少なかった、村落の外部環境が村民自治委員会の選挙に与える影響について、ネットワーク分析の手法を用いて分析した。その結果、人々の社会ネットワークを分析する際に、社会変化のプロセスを注目することで、人々が問題に直面し、それを打開するために行動する、その動態的ありかたを明らかにすることができた。 さらに、広東省河源市において、客家の「囲屋」という伝統的建築にくらす人々の、村落社会の状況と、村民自治委員会の組織態を調査した。今後遼寧省の(1)宗族と婚姻の関係、(2)改革開放期の世帯の機能強化、(3)村民自治の状況、これら三つと比較分析することで中国社会の南北の差異を把握するという、重要な研究の方向性を得ることができた。
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Research Products
(2 results)