Research Abstract |
本研究の目的は、生体医療診断に有効と考えられる,ラマン,近赤外といった分光法による非侵襲的な診断技術を確立するために,ラマンもしくは近赤外イメージングデータ解析のためのアルゴリズムの開発である. 一般的に,生体組織由来のスペクトルには,複数個の化学成分に由来する吸収バンドが存在し,バンドが重なり合って観測される.このためバンドの帰属や,定量性の評価が困難になる. このような問題の解決策としては,重なり合ったバンドを数学的な計算により分離する,いわゆる波形分離が有効と考えられている.ケモメトリックスにおける波形分離の手法としてはSelf-Modeling Curve Resolution (SMCR)が知られている.この手法はスペクトルにおいて観測されるバンドを複数個の化学成分由来のバンドに分解する際に,ピークの個数,位置といった事前情報を一切必要としないという利点がある.しかしながら波形を分離するという数学的処理においては初期値を必要とし,この初期値の精度如何によっては分離のための計算(Alternating Least Square, ALS)が局所解に陥るといった問題点がある.そこで本研究では,局所解に陥りにくい,もしくは仮に陥ったとしても局所解を脱出する計算手法,PSO-SMCRおよびBagged SMCRを開発した.これらは複数個の初期値を与えることで,一部の初期値がALSで局所解に陥ったとしても,全体的なSMCRの精度への影響を軽減し,その結果高い波形分離精度を得るものである. これらの手法をラマンおよび近赤外光で測定した製剤のイメージングデータに適用し,錠剤内部の主薬,賦形剤の分布を非破壊的に観測できることを示した.
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