2007 Fiscal Year Annual Research Report
近世以後における死生空間の構築とその思想宗教的意味
Project/Area Number |
07J08301
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
李 維涛 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 死生観 / 霊魂観 / 幽冥 / 儒学 / 国学 / 仏教 / キリスト教 / 中国:韓国:日本 |
Research Abstract |
この研究の目的は、近世社会における死生観を、死後世界の構築という形で、中国正統儒学→朱子学→(朝鮮儒学)→国学という思想史の流れの中で捉え、そして、儒学だけではなく、仏教・道教・キリスト経による儒学への影響も考察し、比較という観点で、歴史の流れの中で、近世東アジア諸地域における死生観の構築の思想宗教的意味を究明するところにある。 この問題意識に基づき、近世死生観の構築を、近代合理思想への距離でその価値を捉えるという従来の枠組みを乗り越えて捉える揚合の年度計画としては、平成19年度は、先ず中国の儒学における死生観の構想を、孔子から朱子への移り変わり(宋学への仏教・道教からの影響も考える)を分析し、その上で、近世日本儒学者の朱子学死生観に対する批判の形で展開した鬼神・祭祀論を考察することによって、中国儒学と近世日本儒学における死生観と霊魂観の継承と相違関係を明らかにする。具体的には、(1)孔子の死生観を四書を中心に分析する(2)朱子学の死生観を「孔子-周敦願…二程…張載-朱子」という思想史の流れの中で分析する(3)朱子鬼神・祭祀論に対する近世儒者の批判及びその展開(4)近世儒者の鬼神論に対する平田篤胤の批判と吸収と四つに分けて考察を進めると、年度計画を立てた。この一年間の研究を通じて、課題はほぼ計画通りに進んだ。(1)〜(3)までは中国でのフィールドワークも行って予想以上に収穫が大きかった。(4)は十分捉えていないが、その代わりに、宣教師による漢文で書かれている耶蘇教教義書を、平田篤胤の耶蘇教関係著作との比較研究ができて大変有意義だった。これらの基礎書物の徹底的な解読はこれからの研究に大変重要であることを考えると、平成19年度は読書と調査に集中し、ものづくりはしていないが、しかし、これはこれからの2年間の研究のベースを成し、基礎を築いた重要な一年だった。
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