2009 Fiscal Year Annual Research Report
近世以後における死生空間の構築とその思想宗教的意味
Project/Area Number |
07J08301
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
李 維涛 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 生死 / 天 / 道 / 理 / 悪 / 命 / 幽冥 |
Research Abstract |
研究テーマは、近世以後における死生空間の構築とその思想宗教的意味である。近世社会における死生観の形成を、死後世界の構築という形で、中国儒学(孔子→朱子)→(朝鮮儒学)→近世日本儒学→国学という思想史的流れの中でその基本を捉え、更に、儒学だけではなく、佛教、道教、基督教(中国で書かれた漢訳基督教教義書と、江戸の知識人が書いたものの両方)による、国学の死生観への影響も考察し、比較という視点で、歴史通時的に、近世東アジア諸地域における死生観の構築の思想宗教的意味を究明することを目的とする。 平成21年度は、19年度(中国儒学→(「天・命・生死・鬼神・祭祀」)→近世日本儒学),20年度(儒学→国学(佛・基・道との関わりも含めて考察))の着実な文献調査と解読を踏まえて、国学の思想家たち、特に平田篤胤は、何故終生執拗なまでに「死」を思索し、死後世界を追いかけていたかというところに着目し、思想家が生きた時代背景と社会状況も考慮しながら、又同じ時代を生きていた、彼が師匠と崇めた本居宣長にとっては、「死」は何故問題にならなかったのか、ということも考察の視野に入れて、宣長に比しながら、篤胤にとっての「死」の問題を、「天」「命」「道」「理」「悪」などを軸に考察し、彼がやがて「生」から「死」に目を向け、死後世界の追及に至る、その思想的営為の意味を明らかにしようとした。よって、具体的に、(1)「死」を中心に宣長の思想を解読する、(2)宣長と篤胤の生きた時代の背景と社気状況を考察する、(3)篤胤の宣長批判と、彼の思想形成のプロセスを辿って、そこに見える儒・佛・道・基の諸宗教思想による影響を分析する、という三つの作業を行っていた。 その研究成果の一部として、2009年9月東京大学国漢フォーラムで、「近世国学の死生観と「悪」の問題」を題目に発表し、2010年3月に『思想史研究』に「本居宣長と老荘思想-「自然」をめぐって」という論文を掲載した。更に2010年6月に、「江戸国学と漢訳基督教教義書」という題目で、比較宗教思想学会大会で発表することが内定された。
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Research Products
(2 results)