2009 Fiscal Year Annual Research Report
生物多様性・炭素収支の評価にむけた遷移段階別の広域的な森林タイプ分類
Project/Area Number |
07J08314
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
平川 啓子 (長島 啓子) Kyushu University, 農学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 植生遷移 / 植生回復 / 先駆種 / 遷移後期 / 遷移中期 |
Research Abstract |
本研究は植生遷移に関する既存の研究を整理することにより,(1)遷移段階の定義と(2)定義された各遷移段階別樹種リストの作成,(3)樹種リストをもとに植生遷移を考慮した森林タイプ分類を行い,その限界を明らかにすることが目的である.特に遷移パターンを自然林伐採後・薪炭利用後・人工林伐採後の3つに分類し,遷移段階の定義を行っており,前二者については昨年度不足していた遷移初期・中期の樹種情報を中心にリストの作成を目指した.遷移初期についての樹種情報は概ね集まりつつあり,典型的な先駆的樹種の絞り込みができつつある.遷移中期の樹種情報については記載した文献・論文が不足しているため,今年度は大分県の照葉樹林9カ所において調査を開始したが未だ十分と言えず,森林タイプ分類を行う上での課題となりそうである. 人工林伐採後の遷移パターンについては,大分県における遷移初期のパターンと要因を把握した論文がJournal of Forest Researchから出版され,伐採面積,経過年数,近接広葉樹のタイプと距離が初期の樹種構成に大きな影響を与えることを示した.また,これらの要因に加え,九州全域における人工林伐採跡地のデータ解析により,鹿の食害の程度がその後の樹種構成や遷移パターンを変化させることが明らかになった.本内容は国際生態学会のプロシーディングに掲載されるとともに,論文をJournal of Forest Researchに投稿中である.昨年度課題となっていた遷移中期以降の樹種情報は,以前調査を行った再造林放棄地75カ所の調査を引き続き行い,中期にかけての遷移パターンが先駆種から落葉広葉樹を経て常緑樹林となる場合と先駆種から常緑樹林が形成されるパターンの二つが主にあることが確認された.本内容は10月に行われた森林学会九州支部会で発表され,現在九州森林研究に論文を投稿中である. 来年度はこれまで収集した樹種リストをもとに,実際に森林資源モニタリングデータと照合することで遷移段階が不明な樹種を明らかにし,森林タイプ分類にむけた課題を明確に提示することを目指す.
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Research Products
(4 results)