2009 Fiscal Year Annual Research Report
幼児における発話解釈能力の発達およびその基盤の解明
Project/Area Number |
07J08343
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 賢輔 The University of Tokyo, 大学院・教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 心の理論 / 語用論 / アイロニー / メタファー / 実行機能 |
Research Abstract |
本研究は、発話解釈能力の発達およびその基盤の実証的な解明を通じて、発話解釈の認知プロセスに迫ることを目的とするものである。現在の主要な語用論理論(e.g. Sperber & Wilson, 1986)では、発話解釈におけるマインド・リーディング能力、特に他者の信念を表象する能力(メタ表象能力)の役割が重要視されている。しかし、メタ表象能力の獲得時期が4歳前後とされている(e.g. Wellman, Cross, Liu, 2001)にも関わらず、2、3歳児は非常に優れたコミュニケーション能力を示す(e.g. O'Neil, 1996)という矛盾が存在することから、初年度および2年目はまず発話解釈能力の認知過程を明らかにするために、コミュニケーション場面を用いた実験により、幼児のメタ表象能力の発達過程について一連の実験を通じて再検討した。結果,3歳児において,他者の信念理解の萌芽がコミュニケーション場面において特に見られること,一方で,その理解を適切な行動として表出するのは困難であることを見出した。また,幼児の発話解釈を通じてのマインドリーディングにおいて,発話の字義通りの意味を抑制する必要の有無という要因が,幼児の行動に大きな影響を与えており,発話がなされた状況において字義通りの解釈がもっともらしい場合には,幼児がその字義解釈にとらわれてしまうことも見出した。昨年度にはこれら一連の実験成果の一部をStudies in Language Sciencesに投稿し,当該論文は査読を経て採択となり,2010年中に刊行される予定である。 さらに本研究では,発話解釈における種々の推論能力の発達とメタ表象能力の関連を明らかにするため,語用論理論に基づいて,発話の言語形式と発話がなされた状況を要因として操作した実験を実施することによって,その発達的変化を明らかにしていくという目的のため,様々な言語形式の理解について実験を実施する予定である。これに関して,昨年度はアイロニーおよびメタファー理解の発達的変化とメタ表象能力,抑制機能の発達との関連を明らかにするための一連の実験の準備を進めた。その成果を今年度以降,学術雑誌および学会にて発表していく予定である。
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Research Products
(1 results)