2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J08351
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
筒井 忠仁 Kyoto University, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 岩佐又兵衛 / 堀江物語絵巻 / テキストと絵画 |
Research Abstract |
今年度は、年度途中で研究を中断したため、研究計画の全体を遂行する事はできなかったが、その一部について成果を挙げた。まず予定通り、岩佐又兵衛の作品、中でも、長国寺や香雪美術館をはじめ、諸所に分蔵される『堀江物語絵巻』(I)の調査を行った。それによって明らかになった事は、二つある。一つは、これらの絵巻が、極めて強い規範性を持つテキストを詞書として採用しているということである。そのことはつまり、場面の描写が、物語に内在する要素を強く反映しているということであり、従来言われているように、作者の個人的な精神性からのみ、場面表現を理解することが必ずしも適当ではないことを意味する。もう一つは、これはそれまで想定していなかったことであるが、この絵巻に過去の絵巻の表現がしばしば転用されているという事実は、単に画家が、場面を表現するにあたって、過去の画家たちから学んだことを再現しているというだけではなく、より積極的に、過去の絵画作品についての自らの知識をいわば誇示している可能性である。それは、画家の古典絵画に対する教養を示すことになり、さらには、学習した絵画の内容を示すことで、自らの画系を確認する、あるいは示すことにもなる。こうした絵師たちによる自己称揚のための戦略は、17世紀の絵師たちに共通のものであるかもしれず、今後さらに研究を進展させる必要性が出ている。なお、これらの成果を基に、「『堀江物語絵巻』諸本の位置-又兵衛工房における粉本使用とその意義-」と題して、美術史学会全国大会において、口頭発表を行った。
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Research Products
(1 results)