2007 Fiscal Year Annual Research Report
コウモリ由来狂犬病ウイルスの多様性と適応進化の解明
Project/Area Number |
07J08353
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
小林 由紀 Nihon University, 生物資源科学部, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 狂犬病ウイルス / コウモリ / ブラジル / 分子疫学 / ウイルス集団 / 遺伝子多様性 / 個体内進化 |
Research Abstract |
1.ブラジルで分離されたコウモリ由来狂犬病ウイルス56検体の核蛋白質遺伝子配列を決定し、系統学的解析を行った。その結果、コウモリ由来狂犬病ウイルスは宿主コウモリの種類に依存した複数の遺伝子系統を形成し、これらの系統のうち非吸血性のコウモリによって維持されている1系統は、アメリカ大陸の広範囲の地域に分布し、長距離を移動する食虫コウモリから分離された狂犬病ウイルスと近縁であった。このことから、ブラジルには他の地域のコウモリも関与する多様なコウモリ由来狂犬病ウイルスが存在しており、これらコウモリ由来狂犬病ウイルスは、宿主コウモリの生態を反映した疫学的特徴を有していることが示唆された。 2.吸血コウモリ、食虫コウモリ、食果コウモリ、イヌおよびキツネから分離された狂犬病ウイルスの宿主1個体内におけるウイルス集団の遺伝子解析を行った。宿主との相互作用に最も関与する糖蛋白質遺伝子の解析を行ったところ、個体内における狂犬病ウイルスの塩基多様性(nucleotide diversity)は0-0.002であり、他のRNAウイルスと比較して低かった。また、塩基およびアミノ酸置換は分散して起きており、抗原認識およびその他の遺伝子領域の同義置換および非同義置換の割合に有意な差は認められなかった。狂犬病ウイルスは複製頻度を自己調整しており、また、宿主の免疫応答を抑制することによって感染を成立させることが報告されている。従って、感染個体内における狂犬病ウイルス集団の低い遺伝子多様性は、生体内における本ウイルス独自の感染様式を反映している可能性が示唆された。
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Research Products
(4 results)