2008 Fiscal Year Annual Research Report
コウモリ由来狂犬病ウイルスの多様性と適応進化の解明
Project/Area Number |
07J08353
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
小林 由紀 Nihon University, 生物資源科学部, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 狂犬病ウイルス / コウモリ / 個体内進化 / 遺伝子多様性 / ウイルス集団 |
Research Abstract |
コウモリ由来狂犬病ウイルスの多様性と適応進化機序を明らかにするために、狂犬病に感染した吸血コウモリ、食果コウモリ、食虫コウモリ、イヌおよびキツネ体内における狂犬病ウイルス集団の遺伝学的特徴を解析した。宿主との相互作用に最も関与する糖蛋白質遺伝子の全長配列を解析したところ、個体内における狂犬病ウイルス集団の遺伝子多様性は塩基配列レベルで0-0.95×10^<-3>、アミノ酸配列レベルで0-2.08×10^<-3>であり、宿主動物種間で遺伝子多様性の相違は認められなかった。また、これら狂犬病ウイルスの遺伝子多様性はこれまでに報告されている他のRNAウイルスと比較して低かった。塩基置換およびアミノ酸置換は糖蛋白質遺伝子領域に散在していた。d_N/d_Sは1以下で、抗原部位と非抗原部位の間で有意な差は認められなかった。狂犬病ウイルスは宿主の免疫応答を回避するために複製頻度を自己調整しており、さらに宿主の免疫機構を阻害することがわかっている。他のウイルスでは感染個体内のウイルス集団の遺伝子多様性は宿主の免疫暴露を受けると高くなる傾向が観察されていることから、狂犬病ウイルス集団の低い遺伝子多様性は、狂犬病ウイルスの感染様式を反映している可能性が示唆された。また、d_N/d_Sは1以下であったことから、狂犬病ウイルスの糖蛋白質には構造的および機能的な制約が存在していることが示唆された。以上、野外においてコウモリ由来狂犬病ウイルスは遺伝的な多様性が観察されるが、宿主個体内においては負の自然選択の影響を受けた進化様式を有することが明らかになった。本研究成果は野外で流行している狂犬病ウイルスの有効な予防・治療薬を開発する上で重要な指標となることが期待される。
|
Research Products
(3 results)